プチ東洋医学講座 「鍼灸師は軍師?:中編」~東洋医学の戦略と戦術~金子ブログ
前回は喘息を治す戦いを挑むために、まず喘息という病気の性質等を東洋医学的に大きく捉まえることを、軍師が立てる戦略に例えて解説してみました。
今回は、もう少し細かく病気の状態を考えていきます。
もし喘息が、体内に毒素がこもっておこる「実喘」タイプであると判断できれば、次に、毒素がこもる原因はどこにあるのか、五臓六腑のどの働きの失調によるものかということを絞り込む作業に入っていきます。
例えば、消化器系の働きが悪くて余分な水気や湿気がたまり、それが呼吸器系の働きを阻害しているのか、あるいは、ストレスにより気の流れが停滞し、余分な熱毒がこもることで気道の炎症をおこしているのか等々…
戦略で決定された「実喘」を治癒させるために、実喘をおこす毒素の種類とそれを作り出す臓腑の失調を特定していきます。
そこまでわかれば、どこにどのような治療を施すかという具体的な作戦が決定するのです。
例えば『実喘をおこす毒素は消化器系由来の湿気、水気である。ゆえに、消化器系に停滞する毒素の排出を促進させる治療を施すためにこのツボにアプローチすべきである。』という具合です。
このあたりが、軍師の立てる作戦計画の『戦術』にあたる部分になります。
戦術とは、戦略として決定されている大きな目標、方向性を達成するための具体的な作戦のことですね。
例えると、敵が騎兵部隊なのか歩兵部隊なのか、どのくらいの勢力で、どこに本陣を置いて、どういう陣形を布いているのか、より具体的な状況を把握して、こちらとしてはどういう部隊を編成してどこをどう攻めていけばいいのかという細かい作戦計画を立てていくわけですね。
このうような、東洋医学的に病気を診察・診断するための一連の作業を「弁証論治(べんしょうろんち)」といいます。
これは、病気の正体に見当をつけ、治療における戦略と戦術を立て、具体的にどのツボにどういうアプローチをするかを決定する作業です。鍼であれ漢方薬であれ、東洋医学的に治療をする際にはまずこのような弁証論治を行なうのですね。
ここまでの作業が、病気治しをするための軍師としての仕事になります。
ところが、鍼灸師の仕事というのは軍師だけで終わるものではなかったのです。
つづく