「東洋医学をざっくりと…:vol .5」~気の診察と治療~金子ブログ
結局、東洋医学は身体を『気の塊』として捉えていきます。
おさらいすると、「気」には身体を温めたり、血や水分を推し進めたり、新陳代謝を促したりする働きや、「昇降出入」という運動形式がありました。
そして、それだけでは身体のすべての働きを説明できないので、さらにその働きと運動を11種類に分割して捉えていくのですが、それが五臓六腑という概念でした。
そして、「気」の流れが病んでしまい、身体の特定の働きが失調した状態を『病気』と認識するということだったと思います。
それでは実際に、「気」の流れが病んで病気になった場合にはどうするのでしょうか。
東洋医学では病気を診察する際に、患者さんの元々の体質や、病気の原因を知るための問診をした上で、脈や舌、お腹や全身のツボの状態を診ていくのですが、実はそれらの診察というのはすべて、五臓六腑における「気」の流れの異常を知るためのものなのです。
例えばツボであれば、ツボ表面の発汗、弛緩、冷感、熱感、エリアの広がりや深浅等の状態を丹念に診ていくことで、気の流れの状態を推し量っていくのですね。
そのような診察を経て、体質や病気の原因を表す「証(しょう)」という診断名が決まります。
「証(しょう)」とは、体質と病気の原因を表す東洋医学の診断名のことです。
「証」に基づいて治療していくことを「随証治療(ずいしょうちりょう)」といいますが、これは、おひとりおひとりの体質と原因に応じたオーダーメイド治療をしていくということですね。
診察で「証(しょう)」が決まれば早速治療に入ります。
ここでいよいよ鍼の出番になるのですが、東洋医学において鍼というものは、実は「気」を動かすために用いられるものなのです。
実際の治療では、鍼を用いて「気」を集めて来たり、滞りや毒素を散らしたりしていきます。
鍼によって「気」の流れをうまく調整できれば、五臓六腑、つまり「気」の働きや運動が正常な働きを取り戻し、病気は改善に向かいます。
このように、鍼というのは本来、「気」を動かすことを目的として用いられるものなのです。
東洋医学では古来より、「気」の流れを調整していくために、鍼の材質や形状、刺し方等に創意工夫がなされてきたのですね。
つづく